美しすぎる街に時をなくした。
ただ風に吹かれ、川の流れに身を任せたい。
マラッカ川のほとりにあるベンチに座っていると一枚の葉がひらひらと舞い降りてきた。
手に取り、思わず書き殴った詩。そしてそっと水面に浮かべた。
何をロマンチックなことを…、と笑ってしまう。
それくらい穏やかで、美しいこの街。
なんでこんなに安らぐのかを思い浮かべてみると、人の優しさだと気付いた。
海外の観光地には、強引な物売りや物乞いで溢れ、
観光客に群がるようにつきまとう。せっかくの情緒もどこへやら。
でもこの街は違った。みな謙虚で、微笑みに溢れている。
薦められたものを「ソーリー」と断っても、
「いや、気にするな。いい旅を」と、気持ちがいい。
今日はマラッカを満喫した。
朝からアクティブに動き回り、著名なスポットを巡ったーー。
古都マラッカは、14世紀末から東西貿易の中継地として栄えた。
起点となるのはオランダ広場、ここからスタダイスやサンチャゴ砦、
セントポール教会跡など観光スポットを巡っていく。
オランダ広場はオランダ統治時代のレンガ色の建物が並ぶ、
マラッカのランドマーク的な広場。美しいサーモンピンクの広場にいると、
まるで古都にタイムスリップしたかのよう。
スタダイスに隣接するビクトリア女王噴水は、
英ビクトリア女王に捧げるために1904年に建造されたもの。
水しぶきのプリズムが美しかったのでのシャッターを切った。
ポルトガル支配の頃、キリスト教布教の拠点として建てられたセントポール教会の跡。
この教会跡のあるセントポールの丘は、マラッカの街を一望できるビュースポットだ。
汗が滲み、細めて太陽を睨む。
空が高い。遺跡の木陰で水を口に流し込み、大きく息を吐いた。
ふいに抜ける風が心地いい。
街角で少年に出会った。白い犬を抱いた少年だ。
目が合うと、彼はそっと微笑んだ。
吸い込まれるような瞳とはこのことだろうか?
一度はその場を離れたが、少年の瞳が残像として心に残っている。
きびすを返し、少年のもとに駆け寄った。「フォトOK?」まっすぐな瞳がうなずく。
レンズ越しに瞳を見つめる。自分はどう写っているのか?
カメラを向けながら、撮られているのはむしろ自分のようだった。
「サンキュー」と手をふった。
美しい街と美しい瞳。マラッカが大好きになった。
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