午前10時、中国のカシュガルから、
キルギスのオシュへ向かう。
いわゆる国際バスというやつだ。
実は朝からひとつドラマが起きていた。
昨日知り合ったパキスタン人に、
パキスタン大使館宛の紹介状を書いてもらったのだが、
今朝、より完璧な公式文書を用意してくれた。
わざわざオフィスへ行って書類を作成し、
バスの出発時間ギリギリに届けてくれたのだ。
ありがとう!これで必ずビザをもらって
美味しいケバブを食べに戻ってくるよ。
さて、良いことの後には悪いことが待っているもので、
このバスで酷い目にあった…。
まず、出発時間になってもなかなか動き出さない。
なにやらエンジンをいじってる様子。
電気系統のトラブルらしく、
ブルル…と鈍い音を立ててすぐに止まってしまう。
待つこと2時間、ようやく元気にエンジンが動き出した。
走り出して20分。今度はある建物の前で動かなくなった。
道端では運転手がなにやら捲くし立てている。
押し問答が1時間はつづいただろうか?
どうも通行料が足りなくてもめていたようだ…。
もう、しっかりしてよね…。
結局3時間遅れて走り出したバス。
しかし順調だったのは国境までだった。
中国のイミグレ前で突如全員降ろされ、1回目の検問。
スタッフが一人ひとりのパスポートをノートに写していく。
なんの意味があるのか、こんな作業で1時間のロス。
そして中国側のイミグレへ到着し、
パスポートコントロールとカスタムの列に並ぶ。
大勢が詰め掛ける国境に、スタッフはまたもや1人。
イライラしながら長い列をつくり、
のらりくらりの仕事を呆れ顔で見つめていた。
全員の出国手続きが終わるのにざっと1時間。
これで無事中国を出国か!と思いきやまだ終わらない。
バスの出国手続きが手間取っていた。
「あと30分」と運転手が叫んでいたが、
バスが動き出したのは、さらにその3時間後だった。
出国後もたった1~2kmしかないキルギス国境までに、
公安が2度もバスに乗り込み、
全員のパスポートを回収。
念入りなチェックのもと、ようやく出国を果たした。
さてお次はキルギス。
こちらはスタンプを押すだけの簡単な入国。
なんだろうね、このお国柄の違いって。
しかも、日本人はビザが無料!
他国の人たちは100ドルほど払っていたのに申し訳ない。
バスは貨物トラックの列に挟まれ、
2時間ほどチェックに時間がかかったが、
中国側と比べればスムーズなものだ。
というわけで、7ヶ国目はキルギス!
しかし、時計はすでに21時を指していた。
カシュガルからたった100kmなのに
なんだろうこの虚しい気持ちは…。
キルギスに入るも山道でタイヤがバースト!
激しく崖に車体をぶつけ、横転しかけるバス。
真夜中の山道で、修理の音がいつまでも響いていた…。
目が覚めると景色は春だった。
出発から24時間、季節は夏から冬、
そして春へと目まぐるしく変化していた。
たんぽぽの綿毛が飛び交い、
雪解けした山肌には緑の絨毯。
牛や羊の群れがバスの行く手をはばみ、
馬に乗った少年がそれを追いかける。
「中央アジアのスイス」
そう謡われる美しい国、キルギス。
出発から26時間、ようやく辿り着いた旅路の果て。
長い、長い夜のトンネルの向こうには
ハイジの世界が待っていた。
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