ハルタビ’17(バルト3国編) #7 白昼の夢


あんなに前から準備をしていたのに、

気がつけば最後の朝を迎えている。 

まるで穴の空いた洗面器のように、

旅の時間は容赦なくこぼれ落ちていく。 


珍しく目覚ましよりも後に起き、眠たい目を擦りながら

「あぁ、最後かぁ」と、少し憂鬱になる。 

窓の外は曇り空、心模様を映したように重たい。 

それでも出かける準備をしているうちに 

わくわくした気持ちが湧いてきて、 

憂鬱な気分をかき消してくれる。 

旅の引力はやっぱり強い。


リトアニアの首都、ヴィリニュス。 

旧市街としてはヨーロッパ最大を誇り、 

迷路のように入組んだ街角にはゴシック、ルネッサンス、

そしてバロック様式の建造物が多く残存する。 

1994年に世界ユネスコ文化遺産に登録された。 


地図を片手に歩くものの、これまでの旧市街よりも複雑で、 

すぐにここがどこなのかが わからなくなってしまう。 

街並みはリガ(ラトビア)よりもさらに古めかしい感じになった。 

いたるところに教会や大聖堂があり、ときおり鐘の音を街に響かせる。 



まずは赤レンガ造りの聖アンナ教会を訪れた。 

重ない扉を押し、中へと入ってみると、 

高い天井と美しいフレスコ画、そして、

厳かな雰囲気に思わず息をのむ。 

15世紀末に建造されたゴシックの秀作といわれて、

その美しさからナポレオンが持ち帰りたがった、

という逸話も残されているのだとか。 


祭壇に向かって歩いてみると、

コツ、コツと自分の足音が小気味いい。 

耳をすませば今にも賛美歌が聞こえてきそうだ。 

やっぱり朝の教会は気持ちがいいなぁ。 

なんとも言えないパワーをもらい、

清々しい気持ちにしてくれる。 


教会を後にし、すぐ目の前の橋を渡る。 

実はこの橋の向こう側地域は

独立国家「ウジュピス共和国」である。 

ちょっとズルいけど、 


87ヶ国目、ウジュピス共和国 

(この旅7ヶ国目) 


ウジュピスはヴィリニュスの中でも 古くからある地区で、

16世紀初頭の記述が残っている。

正式には承認されていない、 

いわゆる勝手に独立国ではあるが、独自の憲法や司教、

大統領も存在するらしい。 

また、独立記念の日である4月1日には 

街の入口の橋に検問所が設置される。 


こういうニッチなエリアは大好き! 

実はかなり楽しみにしていた。 


橋の手前に「ウジュピス共和国」の看板を発見。 

おぉ、高まる! 

川沿いを歩き、広場を抜けて町の中心部に向かった。 

こんどはシンボルである天使像を発見。 

これは2002年の独立記念日に設置されたのだとか。 

車通りが激しいセントラルスクエアにあり、 

少し重たい空に向かって、ラッパを吹いていた。 


天使像のすぐ近くにあるカフェバーに入り、ブランチを食べた。 

疲れているからか、甘いものが欲しくなり、 

チョコレートクレープと紅茶をオーダー。 

ウジュピス料理があればそっちを頼んでいたが、 

残念ながらそんなものはなかった。 


アーティストが多く住んでいるため、

町のいたるところにアートなオブジェや ウォールアートを目にする。 

店も個性的なアイテムを売るところが多かった。 

せっかくの記念にと、

なにかウジュピスらしいものが欲しかったので、 

国名が書かれたタイルのマグネットをひとつ買った。 


なんだかんだで、小さな町を2時間ほど散策し、 

最後に橋のたもとにいるマーメイドを撮影して 

ウジュピスに別れを告げた。 


わざわざこんな国を目指している人は少ないと思うけど、 

国数稼ぎになったし、想像以上に楽しめた。 

では、ヴィリニュス旧市街に戻り、 

この旅のしめくくりをしよう。

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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