カイロに沈む


カイロの「スルタン・ホテル」で

10泊目の朝を迎えた。

何も変わらないことって案外心地いい。



朝日に目を細めながらジューススタンドへ行き、

フルーツカクテルとサンドイッチを立ち食い。

いつもの商店で水を買って宿に戻る。


ロビーのソファでパソコンを開き、

カタカタとキーボードを叩いていると、

「おはよう」と、馴染みの顔が起きてくる。



↑フルーツカクテル 40円


昨夜の蚊はひどかったな…

今日はどこへ行くの?

こうして午前中は、他愛の無い話に身を任せ、

小川に浮かぶ笹舟のように静かに流れていく。


昼はコシャリ。

ようよう不味くなりゆく。

(枕草子だね)



エジプトに入って以来、

こいつを口にしない日はない。

香川の人は、1日あたり1.2杯の

うどん消費率だそうだが、

エジプト人のコシャリ消費率は

おそらく2杯以上の数字だと思う。


さすがに飽きてきたが、

1杯60円、胃にも懐にも優しい庶民の味。



↑コシャリ 60円


本を読みながらうたた寝し、

夕暮れの冷たい風で目を覚ました。

あぁ、今日が逃げていく…

淋しい気持ちでベッドから起き抜け

馴染みの顔があるソファに腰を降ろす。



ビザの申請がひと段落し、

書きかけの原稿も目処がついた。

読みかけの本も残りページが寂しくなってきた。

カイロを経つときは近い。


ウォッカをコーラで割り、

トランプに興じながらグラスを傾けた。

そういえば、この旅で初めての酒だ。

すこぶる酒に弱いので、すぐに頭が痺れ、

身体がドクドクと脈を打った。


ちょっとハイになり、

ちょっと声がうわずり、

酔いが醒めるころには、時計の針は頂点を指し、

カレンダーの駒が1つ進んだことを知った。



何もなかった1日、

でも、こんな時間ほど後から

懐かしい記憶として甦ることを知っている。

だって、旅中に思い出す日本の記憶は、

ほん些細なできごとばかりだから。

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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