ランニングハイ



いよいよ首都「アンタナナリボ」へ戻る。

ホントならもう1、2つの街を見て回りたかったが、

タフな移動に少しバテてしまった…。

残りの滞在期間は首都でのんびりしようではないか。



今回もタクシーブルースのスペシャルシート、

いわゆる助手席を確保。

ここフォアナランツィアからアンタナナリボは、

23000アリアリー(約1400円)だった。

北へ400km、およそ8時間の移動である。



出発は8時、

のはずが、毎度のことながら1時間遅れで移動開始。

早速ガソリンスタンドに立ち寄るし(最初から入れとけよ)、

まだ空席があるため、客を集めながら街を流す。

アフリカはとにかくゆるい…。



30分ほどかけて街の郊外へやってきた。

運転手は人が変わったかのようにスピード狂に変身する。

タイヤをキュルキュル言わせながらカーブを切り、

先へ先へと、追い越しをかけていく。

この人たちの緩急のつけ方はよくわからん…。



8時間というと、1日の1/3である。

長いか短いかと問われれば、長いと思う。

ところが人間って不思議なもので、

時間にも“慣れ”ができてくる。

つい先日24時間の移動をしてるし、

この旅では1回あたりの平均移動時間は10時間である。

だから8時間なら、

「あぁ、今日は楽でいいや」と感じるようになった。


そもそも睡眠時間だって8時間くらいで、

寝てる間は時間が長いとか短いとか感じない。

それと同じで、

バスに乗ってる間は、身体を通電状態にしているので

どうでもいいことを繰り返し考えている。



ちなみに今日は坂道の上り方について考えていた。

まっすぐ上っていくのと、

ジグザグに上るのでは、どちらが省エネで済むか?

応用力学だね、頭にベクトルを描いて考えていた。

え、どうでもいい?

そう、どうでもいいことに思考をめぐらせて、

意識を限りなく無意識に近づける。

もう寝てる状態と同じさ。

これがバスの乗り方、身体を通電状態にする方法。

気がつくと2時間は経ってるから(笑



ぼんやりと景色を眺めながら、

どうでもいいことを考えつづけた。

道端の標識、400で始まった残りの距離数が

どんどん減っていき、夕方には1桁台に突入した。



「あぁ、首都に戻ってきたよ」

街はちょうど夕方のラッシュを迎えていて

車はのろのろ運転に変わった。

8日ぶりの首都は喧騒に包まれていたが、

文明の香りがして不思議と落ち着く。


午後7時、以前と同じ宿に到着した。

ワゴンを降りて、大きく息を吐く。

終わった、終わった。

通電状態が解け、思考も正常に戻った。



ランニングハイならぬ“ライディングハイ”。

バスで行く世界一周は、タフなスポーツだ。


旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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