クリスマスキャロルの頃には


近くの教会から流れてくる賛美歌を子守唄に、

蚊帳の中で眠ったクリスマス・イブ。

煙突がない部屋にもかかわらず、

真夜中の訪問者がいたようで、

枕元に緑色のバッタが潰れて死んでいた…。



海外で迎えるクリスマスは初めて。

しかもここはルワンダ。

キリスト教徒が約半数を占める国なので

ここ数日クリスマスムードが高まっていて、

道を歩いていると、

煙突に落ちたように真っ黒な顔のサンタが

大きなもみの木を売りつけてくる。



真夏のメリークリスマス♪

この国ではクリスマスは休日。

通りに出てみると、店は軒並みシャッターを降ろしていた。

朝食は少年からピーナッツを買って済ます。



ここブタレから首都キガリに戻ろるため、

昨日調べておいたバス会社に向かったのだが、

オフィスには大きな南京錠がかかっている。

9時と10時にバスがあるって言ってたのに…もう!

仕方ないのでバスターミナルへ向かって歩いていると、

交差点でマタトゥ(乗合タクシー)が人集めをしていた。

聞けばキガリ行きだという。

狭いけど、こいつで行くとするか。



ワゴンに乗り込み、集金係に料金を聞いた。

「2000フラン(約400円)」

ん、なんだか態度がおかしい。

相場は1500フラン。彼の態度から、

少しボッてやれ、という思惑に勘づいてしまった。

たかだか100円程度の話だが、

旅行者だと思って甘く見られるのが気に入らない。

荷物を担ぎ、「他のバスを探すよ」とその場を去った。



しばらく歩いていると、

「VOLCANO」と書かれたミニバスを発見した。

車体は新しく、シートもわりと広い。

乗客はおらず、運転手がひとり携帯電話で音楽を聴いていた。


「これに乗りたいんだけど?」

「ん?9時に出発するから待ってな」(運転手)

「いくらですか?」

「向こうにオフィスがあるから、

そこでチケットを買っておいで」(運転手)

すぐ隣の建物にオフィスがあった。

ブタレ→キガリの運賃は1800フラン(約350円)。




一番乗りだったので、席は自由に選べ

一番後ろの端っこを確保した。

キガリまでの2時間、

段々畑や水田を見ながら、うとうとと過ごした。


「VOLCANO」社のバスはとても快適だった。

キガリの街もまた死んでいた。

昼食のレストランも、ネットカフェも

さんざん探す羽目になった。

海外で過ごすクリスマスって、つまんない…。

ひとりなのですることもなく、

宿の近くにあるショッピングセンターに行き、

用も無く、家電コーナーをうろついた。



電子レンジをいじっていると、

「メリークリスマス♪」

陽気なガードマンに声をかけられた。

「あ、あぁ、メリークリスマス…」

「クリスマスはどんな風に過ごすんだい?」(ガードマン)

え?何にも予定がないからこうして

欲しくもない電子レンジをいじってるんじゃないか…。

「ケーキとシャンパン、かな?」

口からでまかせが通じたのかどうかわからないが、

そいつはいいね!みたいな顔で彼に肩を叩かれ、

ハッハッハと笑いながら去っていった。


うーん、なんだか惨めになってきたぞ…。

一応ワインコーナーを覗いてシャンパンを探してみるも

あいにく置いてなかった。

じゃあコーラを買って帰ろうか、と思ったが

瓶を返しにくるのが面倒なので水で我慢した。


つづいてケーキコーナーへ。

不恰好なチョコレートケーキが目に入った。

「ハウマッチ?」

返ってきた答えは800フラン(約150円)。

財布を覗く。手持ちは400円だった…。

ケーキはあきらめ、

レジの横にあった30円のチョコを1つ手に取り

会計を済ませた。

水とチョコ、あわせて100円である。



宿に戻るとオーナーらしき人物に

「エンジョイ クリスマス!!」と

大声で肩を叩かれた。

痛っ、痛いって!


なんだよ、みんな浮かれちゃってさぁ...けっ。

サンタさん、話し相手になってください。。

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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