ロスト!!


ちょっと遅く起きた朝。

なんだか日本にいるような感覚だった。


クリスマスから4連休、街は今日も死んでいる…。

本棚を覗き、マンガを数冊抱えてベッドに戻った。

たいして面白くもないし、中途半端な巻数なので

前後のストーリーはわからない。

それでもページをめくって時間を潰した。


「モーニング!」

スタッフが部屋の掃除にやってきた。

「あぁ、おはよう」

ほっといてくれというオーラを出しながら

一瞬だけ顔を上げた。

することがないと荒んでいく…。



正午をまわったころ、もぞもぞとベッドを抜け出し、

ガスに火をつける。

鍋に水をはり、そいつを火にかけた。

10分も待つと、ぐつぐつと沸騰しはじめた。

1つ30円で買った袋麺をふたつ鍋に投入、

再びふたをして待った。

キャンプをしてるような、

やっぱり日本にいるような、

無意識で、何気ないワンシーン。



居心地はいいが、これは求めてる旅のスタイルじゃない。

早くここを離れなければ…。

ラーメンを食べ終え、

シャワーを浴び、洗濯を済ませた。



散歩に出もでかけようか?

小さなリュックを担ぎ、玄関に向かうと

大きなザックを担いだ日本人が階段を昇ってきた。

「ウエルカム♪」

スタッフのかわりに鍵を開け、

部屋を案内した。



「1泊500円、今ならシングルルームも空いてるよ」

ようやく現れた話相手、

聞くとエチオピアから来たという。同じルートだ。

散歩がてら街を案内し、

美味しいビーフシチューの店に行った。

彼は33歳、元添乗員という同級生。

堰を切ったように、話は尽きなかった。


その夜、ちょっとした事件が起きた。

明日ここを発とうと、荷物をまとめていると

あるものがなくなっていることに気がついた。


「あれ、ガイドブックがない…」


アフリカ全土を網羅した『旅行人ノート』。

まだこの先必要だし、中にはメモや

出そうと思っていた絵葉書が挟んであったのに…。

ない、ナイ、無い!

ザックをひっくり返し、ベッドの下を覗き、

ロビーの本棚をチェックした。


ない…。


慌てふためいて、探し物をしてると

その彼がやってきた。

事情を説明すると、散らかった本棚をあさり、

『旅行人』のコピーをかき集めてくれた。


「これをつなぎ合わせれば、なんとかなるんじゃない?」


これから行く国のページはほぼ揃った。

ありがとう。明日、こいつをコピーするよ。



アフリカは情報がないとしんどい旅になる。

だから、ガイドブックは喉から手が出るほどほしい。

ベッドの上に置いておいたのがいけなかったのだが、

それにしても酷い仕打ちだ…。


せめてもの情けで、挟んであった絵葉書を

ポストに投函しておいてくれないかな?

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

0コメント

  • 1000 / 1000