最後の古王国


南アフリカに足を踏み入れたものの、

まだアフリカで訪れたい国がいくつかある。

ヨハネスブルクのバスターミナルで旅の相方ヒロと別れ、

単身「スワジランド」へ向かうことにした。



スワジランドは、アフリカ諸国の中で最も同種族の率が高く、

世襲君主による伝統的政治が行なわれている。

武力抗争もなく続いてきたので、

「最後の古王国」とも言われている。



バスターミナルでスワジランド行きのバスを探すも見当たらない。

インフォメーションで聞いてみると、

コンビと呼ばれるミニバスでしか行けないという。

まずはタクシーランクに行く必要があるようだった。

しかし問題が1つ。

危険、危険と言われるヨハネスブルグの中でも

タクシーランク周辺が犯罪発生率のトップというデータがある。

こんな大きな荷物をしょってウロウロとコンビを探してたら、

まさしく“ネギをしょったカモ”じゃないか!?


スワジランドに行くのをやめようか?

そんな気にもなっていた。

「心配し過ぎだよ」と笑われてもいいから

お金で安全を買うことにした。



近くにいた清掃係の兄ちゃんにボディガードを依頼し、

20ランド(約200円)で、タクシーランクまで一緒に来てもらって、

お目当てのコンビを探す手伝いをしてもらった。


ヨハネスブルグ→ムババネ(スワジランド)のコンビは、

運賃170ランド(約1700円)で、

乗車時間は約5時間だった。

車窓にはとうもろこし畑がすっと続き、

どんよりと重たい雲は今にも雨をこぼしそうだった。



国境越えの手続きはパスポートにスタンプをもらうだけ。

Tシャツじゃ肌寒いスワジランドに入国した。

これで38ヶ国目である。



首都ムババネでコンビを降り、タクシーで宿を探した。

1泊1200円と、ドミトリーにしては高かったが

中心街から歩いて20分ほどの距離だったので便利そうだったので

ここ『サンセット・バックパッカーズ』に決めた。



すでに夕方近かったが、少しだけ街をぶらつき

海外用の携帯電話を1台購入した。

本体は2700円、SIMカードとエアータイムで300円、

ためしに日本にかけてみたがいい感じだった。

日本の携帯電話とは異なり、国ごとにSIMカードを購入して

差し替えることによって世界中で使えるという優れモノ。

エアータイムは、先払いのプリペイドカードのようなもので

カードの額面だけ通話ができる。

そして通話料金は驚くほど安い。



霧のような雨のカーテンをくぐって宿に戻ると

TVではオバマ大統領が就任演説をしていた。

アフリカで1番小さな国で、静かにゆっくりと時を刻む国で、

世界が大きく動いていることを知った。


旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

0コメント

  • 1000 / 1000