ロデオボーイ見参!


この旅でたくさんのバスに乗ってきたが、

馬に乗ったのは初めてだ。

レソトという小さな国の小さな村「マレマレア」。



ここはポニートレッキングの基地として人気で、

美しい丘陵地帯を馬で駆けることができる。

今泊まっている『マレマレアロッジ』にもたくさんの馬がいて

ガイド付きのトレッキングが申し込める。



「ポニートレッキングかぁ…。よし、やってみよう!」

4時間コースで、近くの滝まで往復するコースを申し込んだ。

料金は180ロティ(約1800円)だった。


午前9時、集合場所に行ってみると

ガイドが馬に鞍をつけていた。

「よし、乗りな!」

へっ?馬じゃん、コレ…??

あのぉ~、ポニーじゃないの?



ポニートレッキングと書いてあったが、

実はホーストレッキング。

おいおい、馬なんていきなり乗れるの?


ガイドの名はデイビッド。

言われるままに馬にまたがり、

手綱を握り締めながらレクチャーを待った。


「この紐を右に引けば右、左なら左に曲がる。

馬を止めるときは強く引く、以上。」


はへっ?そんだけ…??

「じゃあ、行くよ!」

カポカポと小気味のいい蹄の音を響かせながら

デイビッドは駆けていく。


ちょ、ちょっと待って~(汗)



手綱を緩め、馬のお腹を軽く蹴った。

行けっ!(お願い)

おおぉ、意外と簡単だ☆

試しに手綱を右に左に引いてみると、ちょっと顔を上げて

ハイよ、ってな感じで指示に従ってくれる。

良いヤツだな、オマエ♪


名前はサンフラワー。たてがみがキレイな女の子。

「よし、サンちゃん。デイビッドの後を追え!」



あいにくの曇り空だったが、

村を抜け、緑が美しい丘陵地帯を駆けていく。

こんな道行けるの?

ってくらい細く急な斜面…。

細い足が頼りなく思えたが、サンちゃんは器用に崖を下っていく。

ときどきバランスを崩してドキっとさせるところもかわいい。

たてがみを撫でながら、よ~し、よくやった!と褒めてあげた。



このホーストレッキングは想像以上に楽しく、

そして過酷な道のり。

上りはいいが、下りは何度も肝を冷やした。

段差を駆ける度に振動が突き上げ、

鞍の上で跳ね上がった。


引きつりながらも、ハハハと笑い、

口ずさんだのは『暴れん坊将軍』のテーマソング。

チャ~チャチャ、チャチャ、チャチャ~♪(古っ!)



30分も乗るとすっかり高さや揺れにも慣れ、

手綱を鞍に引っ掛けて両手離しでポーズを取った。

見よ、この華麗なライディング!ヒヒーン!



滝に到着したのは2時間後だった。

まぁ、ビクトリアの滝を見たばかりだし、

ちっちゃい滝だったが、それでも馬で来たことで感動もひとしお。

マイナスイオンを浴びながらしばしの休憩。

しかし、乗馬は意外と体力が要るものだ。

すっかり足はガクガク、腰もずっしりと痛い…。

振り落とされないように身構えているから

普段使わないような筋肉が刺激されるのだろう。

これなら健康器具の乗馬マシンも効果はあるに違いない。



帰り道。

相変わらず空は重たいが、耳元をくすぐる風が気持ちいい。

たてがみも揺れている。

目を閉じると、カポカポという大地を弾く足音が小気味良く、

眠気に似た心地良さをくれた。



乾いた大地は太鼓の音、

岩場は甲高い木琴の音、

ときどき、ブルル!と息を吐いて自分を鼓舞するサンちゃん。

よしよし、あと少しだよ。


単騎千里を駆ける、ならぬ単騎4時間を駆ける!

もう手綱はすっかり離したまま。サンちゃん信じてるぞ。

カメラを両手でしっかりと構え、

流鏑馬のように的を射抜いた。



悠々と静かに馬を乗りこなす欧米人に混じってひとり、

何度も奇声を上げながら、ロデオドライブを楽しんだ。

俺にもおくれよ、そのテンガロンハット!

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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