滝のある町


何時間眠ったのだろうか…?

快適過ぎる“カマ”の誘惑、

このバスを「走るホテル」と名づけたい。



約20時間の移動を終え、

「プエルト・イグアス」に着いたのはちょうど正午。

ブエノスアイレスよりも日差しが厳しく、

額に汗がにじんだ。この旅はいつも夏。



同じバスに乗り合わせた日本人7人で宿探しを開始。

ここは一級観光地なだけに、

ガイドブックに乗っている宿は高級過ぎて手が出なかった。

暑さと重たい荷物に辟易しながら、

宿探しに苦戦していると、アルゼンチンにも客引きはいて、

ひとりの男性が近づいてきた。


「いい宿を紹介するよ」



情報を持ち合わせていなかったし、

早くこの暑さから開放されたくて

彼についていくことにした。

すると、今までの半額以下の宿を次々と紹介してくれた。

その中からバスターミナルに近い宿を選び

チェックインすることにした。

1泊35ペソ(約1000円)はありがたい。



チェックインが済むとチップも要求せず彼は帰っていった。

その潔さに感動し、慌てて彼を呼びとめ

少ないながらもチップを手渡した。

いい仕事してくれてありがとう♪




ここは「イグアスの滝」がある町。

イグアスの滝は、アルゼンチンとブラジルの二国にまたがる

世界三大瀑布の一つでイグアス川の下流にある。

ちなみに“イグアス”とは先住民の言葉で

「大いなる水」という意味だそうだ。



滝の観光は明日に回すことにし、

荷物を部屋に放り込み、身軽な格好で町を散策に出かけた。

土産店が軒を連ねる小さな町だった。

スーパーで夕食用の食材を買い、

近くのパーラーでアイスクリームを食べた。


わざわざ日記に書くまでもないありふれた1日だが、

こんな何気ない1ページも旅の貴重な財産だと思う。



手提げ袋を抱えて宿に戻ると、

他のメンバーは庭のテラスでしこたまビールを飲み、

「お先で~す♪」

と、すでにできあがっていた。

長時間移動の疲れも見せず、みな元気だ(笑

たまたま出会い、しばし行動を共にする

今が旅の交差点、クロスロード。


やがて信号が点滅すればまた離れていく…

それが長旅のありふれた情景。

でもね、ありふれてるけど、

毎回色が違う、カタチが違う、温度が違うんだなぁ。

だから、1つ1つがいとおしく思える。


過去というほど時間は経ってなくても、

そんな記憶のカケラをたどると、

ちょっとだけ心が痛いような、くすぐったいような、

訳のわからない感情に触れられる。不思議な感覚。



「写真撮ろうか?」

セルフタイマーをセットし、

10秒間の笑顔を繰り返す。

5台のカメラに

今日とこの出会いを焼き付けた。

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

0コメント

  • 1000 / 1000