25時間バスの果て



南米のバスは日本よりも快適だと思う。

飛行機のファーストクラスにあたる“カマ”は

高過ぎて手が出なかったので、

ビジネスクラスの“セミカマ”を選んだ。



アルゼンチンでカマは体験済み。

座席の広さはさほど変わらないが、

違いが如実に現れるのが食事!

お世辞抜きに美味しい食事が2回振舞われる。

セミカマは残念なことにクッキーとパンのみで

ドリンクのサービスもなかった。


そうそう、余談だが“プレミアムカマ”という

最上級クラスのバスもあり、シートは180度に倒れるし、

なんとバスは無線LANが飛んでいる。

お値段はセミカマの倍以上だったけど…。



バスは走り続けた。

昨日の18時半にサンティアゴを出発し、

一夜明けてもまだまだゴールの「サンペドロ・デ・アタカマ」は遠い。

車窓の景色は、左側は海、右側は砂漠が広がっている。

アタカマ砂漠である。

日本海を思わす荒れた海と、岩が転がる荒涼とした砂漠。

細長~いチリは、豊かな自然環境があり

海と砂漠が同時に現れる不思議な風景を見せてくれる。



車内では本を読んだり、映画を見たりして過ごす。

足が伸ばせるリクライニングシートなので、

時間の長さはさほど感じさせない。

ときどきバスボーイが席にやってきて、

「もうすぐ休憩だよ」とスペイン語で教えてくれた。


何もしていない、というかずっと休憩している状態なのに

また休憩って変な感じ。

「20分だよ」と、時計で教えてくれたので

ターミナルを飛び出し、町の商店でコーラとアイスを買った。



ついに24時間が経過した。

丸一日この場所で過ごしたことになる。

「カラマ」の町を過ぎるとアタカマまではあと少し。

月面世界のようなアタカマ砂漠の真ん中に小さな町が見えてきた。


サンペドロ・デ・アタカマだ!


バスを降りると、客引きが遠慮深げに声をかけてきた。

いかにもいい人オーラが出ている。

ガイドブックに載っている宿に行くつもりだったので

一度は断ったが、なぜだか無性に彼が気になり、

もう一度こちらから声をかけた。

1泊10000ペソ(約1500円)と高めの宿だったが、

彼の宿に泊まることを決めた。



宿は日干しレンガでできた可愛らしい平家で

朝食も用意してくれるという♪

「ここからウユニ(ボリビア)に行きたいんだ」

マルコスにそう告げると、すぐに旅行会社に電話をかけてくれて

「今から手続きに行こう」と、車を出してくれた。



この町からウユニ塩湖を通ってウユニへと抜けるツアーはメジャーで、

高地の湖や塩湖を通っていくため人気が高い。

彼が案内してくれた旅行会社も同じような行程で

2泊3日のツアーだった。

宿代、食事代も込みで110ドル。安い!

アタカマ観光もしたかったので出発は明後日にした。



「ありがとう、マルコス!

ついでにもう1つお願いがあるんだけど」

笑顔で、何でも言ってごらん、という顔で頷く。


「明日はタティオに行きたいんだ」

「OK、じゃあ朝の5時に出発な」


は、早っ…。

こりゃあアタカマも忙しくなりそうだった。

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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