ジャングルクエスト2 ~迷いの森~



キーキーと、猿だか鳥だかわからない声がする。

しっとりと水気を帯びたジャングルの朝、

靄がかかったようなすっきりとしない空。



朝食は午前7時、

オラ!と元気のいい挨拶が飛び交う。

テーブルに並べられたパンやサラダ、

そしてフルーツをたっぷり盛って席に着いた。

「いただきます」

紅茶は7種類から選べ、今朝はオレンジペコーにした。



腕を見ると妙な腫れがいくつかできていた…。

痒くはないけど気になって触らずにいられない。

蚊ではない何かに刺されたか、噛まれたか…。

そういえば昨日は写真に夢中になっていて

うっかり軍隊アリの巣を踏んでしまった。

たちまちアリたちの反撃に遭い、

足首をさんざん噛まれ、とても痛い思いをした。

タランチュラも出たし、触ってはいけない植物もあった。

ジャングルって危険がいっぱいだ…。



今は雨季。

アマゾン川の水量は乾季よりも8m上がっているという。

出発前にネットで天気予報を調べたところ

1週間すべて雨マークで、降水確率が95%…。

ところが、実際来てみるとときどき雨は降るものの

たいていロッジにいるときで、

いざ外に出ると不思議と止んでしまう。

晴れ男復活?



さて出発だ。再び川を下り、

さらにジャングルの奥にあるセカンドロッジを目指した。

スピードボートから小舟に乗り換え、

アマゾンの細い支流を下っていく。

木々を跳び移っていく猿の群れやカラフルな鳥たち。

アマゾンにいることを強く実感した。



ロッジにつくとしばし休憩。

昼寝をし、ランチを食べ、出発のときを待った。

これからジャングルを歩くという。

虫除け、カッパ、ゴムブーツと、万全の準備をし小舟に乗り込む。



これこそアマゾンツアーのハイライト、

一番楽しみにしていた瞬間だ。

舟は森の奥へ奥へと進み、

何度も頭を下げて木の枝をやり過ごした。



「よし、上陸しよう」

隊長(ガイド)が先導し、その後につづく探検隊。

舟から降りるとさっそく膝まで水に浸かった。

水中には大きな根っこがはっていて何度もつまずく。

冒険だ、冒険だ。



水から出ると今度は腐葉土の上を歩く。

葉っぱの間には、アリやクモ、

ムカデのような生物が蠢いている…。

ひえぇ~。


一番の難敵は蚊だった。

蚊柱のようにまとわりつかれ、耳元でキンキン羽音が鳴っている。

服の上からも容赦なく刺し、

これまた痒みがヒドイ!

じめじめと蒸し暑く、その上絶えず蚊と格闘…。

ジャングルなんて嫌いだ…(泣



木に木が生えていたり、

人よりも大きな根っこを持つ木があったり。

花はなく、茶色と緑の世界。

アマゾンは多くの命が生まれ、そして消え行く。

きっと未知の生物もわんさかいるはずだ。



森林浴はリフレッシュ効果があると言うが、

アマゾンは違った。

ここは迷いの森、そして闘いだ。

暑さと虫、虫暑いと呼ぶとちょうどいいかも。


もし、こんなジャングルでひとりにされたら

どうやって生きていこう…?

はぐれないように注意しながら最後尾を歩いた。



2時間ほど歩くと視界が開け、アマゾン川に出た。

そして迎えのボートが待っていた。

生還!

ボートは風を切って進むので気持ちがいい。

蚊に刺された痕を数えながら

やっぱりアウトドアは苦手だな…と再確認した。



夕方まで釣りをした。

餌は牛肉で、ピラニアを釣る。

エビで鯛を釣ると言うが、

これじゃ、鯛でエビを釣るような感じだ。



小枝に針と糸をつけただけの簡単な釣竿、

小舟から糸を垂らし、水面をじゃばじゃばさせながら釣る。

ときどき強い引きが来るもののなかなか釣れなかった。

それでも辛抱強く待っているとようやく1匹針にかかった。

ドキドキしながら糸をたくし上げると、

顎から腹にかけて赤い模様の入ったピラニアがもがいていた。

口には鋭い牙があり、さながら小さなサメという感じ。

ガイドに針を外してもらいそのまま舟に転がした。



「今夜はピラニアのフライだ」

ピシャピシャ跳ねる魚を眺めながらガイドは笑った。

ピラニア釣りをしているすぐ脇では

子供たちが元気に泳いでいた。

あのぉ~ピラニアがいるんですけど…。

そんなことはお構いなし。

ときどき舟まで泳いで来てはニカっと笑ってまた水の中に潜る。

アマゾンの子供は強い。


その夜食卓に4匹のピラニアが並んだ。

約束どおりフライとなって。

一緒にツアーに参加している欧米人たちは

珍しそうにピラニアの写真を撮っていたが

結局誰も箸をつけなかった。


「へい、ジャパン」

全部食べていいよと皿が回ってきた。

おさかな天国日本代表、

そのプライドにかけて完食した。


アジフライみたいで美味だった。

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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