マラッカに落ちる


バックパッカーの間で「沈没」という言葉がある。

これは一箇所に留まり、現地の人に同化して過ごすことを指す。

足繁く観光をしていた昨日までが嘘のように

出不精になり、宿でダラダラなんてことに。


旅立つ前は、「沈没なんてもったいない!」

と、思っていたけど、

その気持ちが少しわかってきたかもしれない。


シンガポールを後にし、

マレーシアのマラッカに辿り着いた。

歴史情緒に溢れた美しい街並み。

人々もやさしい。料理も口に合う。


「もっとここにいたいな」

そんな小さな気持ちが芽生えてきた。


宿探しも難航し、3時間街をさまよってようやく手にしたベッド。

エアコンが効き、ファンがそよ風を運ぶ。

もう、動けないや…。

ベッドに大の字になり、ぼんやりと天井を見上げる。

この幸せな気持ちって何だろう?


自分で選んで、日本を離れた過酷な旅。

自分で自分を落としておきながら、

ほんの少しのやすらぎを手に入れる幸福感。

今までは当たり前にあったものなのに、

今では何よりも愛しい時間。

日本に帰ってもこの気持ちって薄れずにいられるかな?

満たされすぎてた毎日に鈍化する幸せの定義、

そして欲深くなる自我…。

日本にいるときよりも

幸せを感じるハードルが確実に低くなった。


ずっとこの自分でいたいな。

怠惰とやすらぎの狭間で、

少しだけマラッカに落ちて考えた。

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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