ヒッチ、ヒッチ、ヒッチ


キャメロンハイランドの「タナ・ラタ」という街で過ごしている。

ここはさわやかな風が街を通り抜け、小路に香る草いきれ。

パラっと夕立がきては、静かな夜がはじまる。

美味しい食事、快適な宿、じゃれあう猫たち。

いつもより緩やかな時間が流れる空間だ。


今日は朝から登山。

「Gunung Brinchang」という山で、標高は2016m。

片道19キロというからハンパない…。

登山口までのバスを探すが、待ち時間が1時間。

よし、この街ならあの手で行こう。


ノートに「BRINCHANG」と書き、親指を空に向けた。

1台のトラックが停まった。

「OK、カモン!」

タンさんという男性が快く車に乗せてくれた。

カタコトの英語を駆使し、あつく御礼。


20分ほど乗せてもらい、車を見送り歩き出す。

山頂に近づくにつれ風が冷たくなり、

乾いた汗が心地いい。

あたりは「これでもか!」と、言わんばかりの緑。

そう、ここはボーテ茶の産地で、棚田のような茶畑が山の斜面に広がっている。


うわぁ、どうしよう…!?

あまりの美しさにテンションが上がる。

カメラ3台をフル回転させて夢中でシャッターを切った。

何度も足を止めては、飽き足らず写真を撮る。

日本に持って帰りたい景色がたくさんあった。


歩きはじめて3時間、山頂まで残り3kmまでやってきた。

息が切れる、、、足が重い、、、ふいにクラクションが鳴った♪

「乗ってくかい?」若いカップルだ。スリーさんとレイチェルさん。

「ありがとう、助かったよ」杖を放り投げ、車内に飛び込んだ。


山頂付近で車を降り、ここからはラストスパート。

道は険しいジャングルに変わり、当然車は通れない。

岩をよじ登り、張り出した根っこをかわす。

そしてついに視界が開けた。


「…ぁ」


景色への感動というよりもここまできた達成感。

ここはマレーシアで一番高いところかも。

「やったよー」誰もいない山頂で、心置きなく日本語を叫んだ。



帰り道。19kmはあまりに長い。「絶対に無理」だと、負けそうな自分。

遠くにエンジン音が聞こえる。千載一遇のチャンス。

遭難者のごとく車に駆け寄った。冷房の効いた涼しい車内。

心地いい揺れと、インドの音楽に身を任せながら今日のできごとを反芻した。

ムラリさんとラシィさん、助けてくれてありがとう!


こうして3台の車に助けられ、たったひとりの小さな冒険はここに完結した。

言葉では伝えられなかった感謝の気持ちをここに記す。

「ありがとう」

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

0コメント

  • 1000 / 1000