パーイはドラマがいっぱーい!(前編)


タイの北部、パーイ。

静かな山間の町で、心を騒がす大冒険が巻き起こった。

この町の周辺には、山岳少数民族の住む村がいくつも点在していて、

町からは10~15km圏内だと言う。

リス族、ラフ族、シャン族さらには中国国民党の残党まで。

ホントはバイクを借りて村を巡りたかったのだが、いかんせん貧乏旅行だ。

昨日見つけたレンタサイクルの店へ直行した。今日もひとり旅。

地図を片手にペダルを漕ぎ出す。


最初の目的地「リス族」の村までは10kmだ。

通りを一本曲がると、道はガタガタ。見渡す限り坂道が続いていた。

最初は元気にペダルを漕いでいたものの、

いつしか自転車を降り、カラカラと押していくことに。

まぁ、結局帰りまで引き続けることになるのだが…。

どこまでも続く坂道、前を見てると辛くなるので自分の影を見ながら、ただただ歩いた。


どれくらい登っただろうか、背後から子どもたちの声が聞こえてきた。

振り返ると、ニコニコとこちらを見つめる子どもたち。

いっせいに駆け出し、自転車の周りに集まってきた。


「☆♪#$#%#%#」


なにやら捲くし立て、駆け出しては止まって振り返る。

ははぁん、競争しようってか。

自転車に飛び乗り、小さな影を追いかける。

悲鳴を上げて逃げだす(?)子どもたち。

たわいもない追いかけっこを飽きもせず繰り返した。


「もうのどがカラカラだよ…」と、ギブアップ。

木陰で休むことにした。ずっと遠くなる子どもたちの影を見送りながら。

そんなこんなでリス族の村までやって来た。

坂を上り始めて2時間も経っていた。


一軒のお店を見つけ、冷たいコーラを注文した。

帰り際に「リス族」の写真が撮りたいんだ、

(リス族は綺麗な民族衣装を着ている)

と告げると、女の子は笑顔でこう返した。

「私もリス族だよ。じゃあちょっと待ってて」

待つこと5分。

自慢の民族衣装姿で現れた。

この衣装を着るのは女性だけで、

山岳民族の中ではもっとも華やかな存在と言われている。

「名前はなんて言うの?」(KAZ)

「アサミ」

「えっ、日本人みたい!?」(KAZ)

「あなたは?」(アサミ)

「カズ」

「ハハハ(笑)」(アサミ)

「なんで?」(KAZ)

「だって、リス族みたいな名前だもの」(アサミ)

日本人みたいな名前のアサミと、リス族みたいな名前のKAZ。

なんとも不思議な関係だ。

でも、今日の大冒険はまだまだ始まったばかりだった。


つづく

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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