パーイはドラマがいっぱーい!(中編)


再び坂をのぼる。

一度はひいた汗が、ダムの放水のように噴出す。

気温35度、今日も暑い。

相変わらず自転車を押して歩く。

その横を何台もバイクが気持ちよさ気に抜き去っていった。

そういえばここで自転車を漕いでいる人を見かけない。

村人も、目を丸くしてこっちを見つめ、

自転車を指差しては静かに微笑む。

こんな山道だもの珍しいんだろうな…汗


リス族の村を後にし、5kmほど進んだだろうか。

ラフ族の集落が見えてきた。


ラフ族の発祥の地はチベット高原だと言われている。

ビルマを経て19世紀後半からタイに入国するようになった。

「狩人」の異名を持ち、弓矢で虎に立ち向かう民族だとか。

ちょっと恐いかも…。

いやいやまったくの杞憂だった。

目の前を10人くらいの子どもたちが楽しげに歩いていた。


「サワディーカップ!」

大きな声で彼らを呼び止めるとこれまた笑顔で駆け寄ってきた。

「&%#$$%&&‘’」

いっせいに何かをしゃべりだす。

カメラを見てるし、写真を撮れってことか?

おもむろにカメラを構えた。

すると、首を振り、道の先を指差す。

とにかく着いて来い!そんな合図を送る。

早く早くと手招きし、どうやら待ちきれない様子。


じゃあイッチョ!

兜の緒ならぬ、頭のタオルを締めなおし、自転車にまたがった。

すると一人の子どもが後部座席に飛び乗った。

うぅ、、重いって…。

子どもたちはどんどん先に行く。

「#$%&‘$%&’」(KAZ)

子どもたちの言葉を真似し、わけのわからない奇声を出してやった。

いっそうはしゃぐ子どもたち。今日二度目の追いかけっこが始まった。

ハァハァハァ、、、

喉も声もカラカラで滝まで辿り着いた。

服をひっぱりまだまだ彼らの先導は続く。


お目当ての場所に到着すると、

着の身着のまま、滝つぼに向かって滑り始めた。

ゴツゴツの岩場を小魚のようにいっせいに滑り降りる。

ジャボーン!小気味いい水音と、はしゃぐ声が木霊する。

「ハロー、ハロー」と滑走台で手招き。

そしてポーズをとる。


なるほど。ここで写真を撮ってほしかったんだ。

滝つぼまで滑り落ちては、自分の写真を確認し、また滑走台へ。

ホント、疲れと恐れ知らずの子どもたちだ。

ラフ族だけにラフティング??

そんな下らないことを呟きながら一緒にはしゃぎ合った。


よっぽど気に入られたのか、彼らの家まで行くことに。

自転車に乗った珍しい日本人がかやぶきの家へとお邪魔した。

まさにウルルン滞在記だ。

番組の最後はお約束の別れのシーン。

「#$%&‘()#$$」と、

別れを惜しんでるのかどうだか?

通訳もナレーションもないまま、自転車で坂を滑り降りた。

でも目を閉じると、子どもたちの歓声がまだ木霊していて、

どこまでも追いかけてくるようだった。


つづく 

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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