もう1つの赤い橋


タイで過ごす最後の日。

メコン川を隔ててラオス国境と接するノーンカーイという街にいる。

ここはタイ東北部の主要都市の一つで、

ラオスとの国境の町として知られる。

そう、ラオスの首都ビエンチャンはもう目と鼻の先だ。


午前9時、ようやくゲストハウスのベッドに辿り着いた。

ひどく蒸し暑い部屋で顔をしかめながら眠った。

そして午後、あまりの暑さに耐えかねシャワーへ。

そのままカメラ片手に街へ飛び出し、

タイ、ラオス、ベトナムの雑貨が入り混じった市場を練り歩いた。

夕暮れを待って、トゥクトゥクで向かった先は、

「タイ・ラオス友好橋」

メコン川を隔てて国境を接する両国を結ぶ橋だ。

途中までは歩いて渡れるため、

わき道から橋へと上り、まっすぐに伸びる橋を歩く。

ラオスへと向かう車、タイへと向かう車が交差する。


メコン川のちょうど真ん中、

おそらくここが両国の国境だろう位置に立った。

目に飛び込んできたのは、両国の間に沈む夕日。

川面を照らしながら、

もう1本の“赤い橋”を作り上げていた。




あぁぁ…すごっ、、


声にならない声。心のため息。

同じ夕日でも、見る場所によって印象がかわるものだ。

24時間のうち、わずかな時間だけ世界が赤く染まる。


忘れ物をとりに戻った教室でこんな夕日を見たっけ?

パソコンを閉じ、会社を一歩出ると世界が違って見えたっけ?

電車の窓から、遠くの茜空を眺めたっけ?

いつか見ただろう夕日を思い返しながら異国の空、

国境の真ん中で、アジアの時間が止まった。

この先、どれだけの夕日を見るだろう?

あたりまえにあるくせに、ときどきこうやって心と時間を奪う。


最近、夕日を見ましたか?


その手を休めて、窓を見て欲しい。

どんな色の空がそこから見えますか? 


旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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