見上げてごらん、夜空の星を
ジャイプールの歴史は、たったの260年しかない。
ムガール朝の衰退に乗じて、藩王(マハラジャ)ジャイ・シンが、
先祖代々の丘陵城砦であるアンベール城を出て、
自らの名にちなんだこの街を建設したのがはじまりである。
街を歩いていると、さながら中世の世界に迷い込んだような…。
壮厳な宮殿、活気あふれるバザール、
そして街を包み込むようにそびえる城砦。
悠然と馬車が走りぬけたかと思えば、
反対方向からはラクダに引かれた荷車が。
ここジャイプールの旧市街は、別名「ピンクシティ」と呼ばれる。
およそ100年前、ここを訪れた王子を歓迎して、
街中をピンクに染めたという。
実際、ピンクではなく、素焼きレンガの茶褐色なのだが。
今日はそんな幻想的な街を、昨日出会った粋なリキシャの彼、
ラッキーと市内観光に出かけた。
行きたいスポットを7ヶ所リクエストし、料金は150ルピー(約400円)だった。
現役のマハラジャが暮らす「シティ・パレス」、
かつての宮廷の女性たちが街を見下ろしていたという「風の宮殿」、
歴代の皇帝により要塞として利用された「ナルガール要塞」。
どれも素晴らしい場所だったが、とにかく暑い。
顔をしかめたまま、とりあえずシャッターを切ったという感じだった。
そろそろ旅の疲れがたまってきたか…。
最近はとにかくガイドブックをなぞっている感が否めない。
インドの広さに圧倒されてか、暑さのせいか、
ここだけは押さえなきゃ!というスポットを回っては
それで満足してしまう。
だって旅立って今日で4ヶ月。
ところが世界地図を広げてみると、
まだ1/4も進んでいないのではないだろうか。
さらに悪いことに、
今いるインドよりも、これから先のネパールやイエメンの
ガイドブックばかり読んでしまう。
足元よりも、目先ばかり気になって仕方ないのだ。
こんな状態じゃ、せっかくの旅が色あせてしまう。
もっとインドを感じよう、今を大事にしなきゃ…。
(って頭じゃわかってるんだけどね…)
よし、お金はないけど、気分はマハラジャに。
もっとゆとりを持って旅をしようと思う。
これがジャイプールの街で悟ったことだ。
マハラジャのジャイ・シンは、優れた占星学者でもあり、
膨大な量の煉瓦やモルタルを使って、
とても精密な天文台「ジャンタル・マンタル」をこの街に築いた。
どんなに忙しくても、夜空を見上げて星を眺める、
そんな余裕が必要であり、なによりの贅沢なのだろう。
見上げてごらん、夜空の星を。
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