不思議の国「ブータン」


※7月6日の日記のつづきです

無事にゲートをくぐり、ブータンにいる。



ここはヒマラヤの桃源郷として知られる仏教王国。

鎖国に近い政策をとっているため、

地球上のほとんどの場所で失われてしまった手付かずの美しい自然と、

自給自足に基盤を置いた伝統的な生活文化が残っている。

「スローライフ」という言葉は、この国のことを指すんだと思った。


ここプンツォリンは、国境の街という背景から、

ずいぶんとインド化が進んでしまったが、

それでも他の国では味わえないような穏やかな空気を感じることができる。

ホント、来てよかった(入れてよかった)。


ブータンでは、「民族衣装を着るように!」と

王様からの御達しがあるため、

男性は「ゴ」(←柔道着みたい…)、女性は「キラ」(←浴衣みたい♪)

と呼ばれる民族衣装を着用している。

顔は日本人だし、衣装もかつての日本と似通っているので、

まるで戦前の日本にタイムスリップしたかのようだ。


はて、今日は日曜日だからか、店がほとんど閉まっている。

人通りもまばらで、これはどうしたことだろう?

お昼時にもかかわらず、食堂を除く店という店が閉まっている。

ときどき出くわすポリスにドキっとしながら、

あてどなく街を彷徨った。


突然、ザーっと雨が落ち、慌てて軒先へ逃げ込む。

30分くらいだろうか、すぐに雨はおさまり、青空が戻ってきた。

空には虹が架かり、なんともニクイ演出だ(笑



露に濡れた緑がきらめく。子どもが元気に駆けてくる。

野原を、小川を、緑道を。

ブータンをこうして歩いていると、

急ぎ過ぎた世界を、少し取り戻せた気がしてきた。



いくつかの角を折れると、お寺に出た。

たくさんの人が時計回りにお寺を周回し、祈りを捧げている。

そうか、ここにみんな集まっていたんだ!

ブータンは信仰に篤い仏教国。

こうやって決まった時間の礼拝を欠かさないのだ。


さて、先の日記でも少し触れたが、

ブータンには「国民総幸福量(GNH)」なるものがある。

いわゆる幸せの指標で、GNHとはGross National Happinessのこと。

開発や国際化よりも、自国の文化を尊重し、

心が豊な生活をしようとするものだ。


実際に、「世界一幸せな国ブータン」として、国民の満足度は高い。

GDPやGNP増加を主眼としている我々先進国は、

今の資本主義社会に行き詰まりを感じていないだろうか?

忙しい毎日。束の間の休日も月曜の仕事を考えると寝て過ごす…

なんてことが多くないだろうか。

ストレスと闘い、人間関係に悩み、

時間を切り売りしてお金を得る。

そしてそのお金の有意義な使い道すら見失いがち…。

僕らの未来はどこへ向かおうとしているだろうか?


ブータン。

国土面積は九州と同じくらい。

約90%の人が農業に従事し、ほぼ自給自足の生活。

たしかに「貧しい」国なのかも知れないが、

彼らに触れると、そんなことは次元の違う話に思えてしまう。

とても穏やかで、たおやか。

そしていつも微笑んでいる。

資源のない日本は、農業に帰化して生きるべき。

そう唱えた経済学者がいる。

モノに溢れ、情報に溢れ、物質的な享受よりも、

心の豊かさが叫ばれる日本。

そんな日本に垂れた一本の蜘蛛の糸が

「スローライフ」という言葉だと思う。


ほんの少しでいい。ブータンを知って、ブータンを感じてみよう。

ひょっとしたら(かなり強引な思想だけど…)

日本の将来を見据えるヒントが隠されてはいないだろうか?

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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