しまった…!
後の祭りとはこういうことを指す。
でも、アテの無い旅にはいいスパイスだ。
早朝6時、
ホデイダから「タイズ」という街を目指し、
1日1本しかない長距離バスに乗った。
エアコン完備の快適なバス。
ここイエメンは早朝から気温はぐんぐん上がり、
あっと言う間に40度を超すのだから。
あまりの快適さについうとうと、
気がつくと荒涼とした景色が車窓を染めていた。
「ここはどこ?」
車掌に尋ねると、知らない地名が返ってきた。
「タイズに行きたいんだけど…」
「あぁ、とっくに過ぎたよ」
えぇぇ!!と、驚くこと3秒。
でも、すぐに楽しい気分になってきた。
このバスの終点は「アデン」だと言う。
じゃあ、アデンまで行ってみますか!?
差額の600リアル(約300円)を払い、
もう150kmのバス旅が追加された。
アデンはイエメンの港湾都市。
旧南イエメンの首都であった。
古くから海運の要衝「海のシルクロード」として注目され、
オスマン帝国もここを支配していた。
近代はイギリスの植民地として支配を受けるが、
イギリス統治下で急速に港湾として機能が充実した。
アラビア半島の南端、そこはアラビア海が広がっている。
砂漠地帯を抜けると、空気が湿気を帯びてきた。
海が近い。
日本じゃお盆休みが始まった頃だろうか?
成田空港は出国ラッシュだろうな。
去年の今頃は、エアコンの効いた部屋でうたた寝しながら
高校野球を観てたっけ。
今年の夏は長い。
日本を旅立った2月からずっと続いているのだから。
終わらない夏をどこまでも追いかけている。
視界に海が開けた。アラビア海だ。
山岳地帯、砂漠地帯を抜け、
ついにアラビアの海岸線を走っている。
ちょっと未来を踏み外したことで
まったく新しい展開。
人生なんてどっちに転んだっていいんだ。
手にした未来を楽しめばそれで。
潮騒に心が躍る。
窓から顔を出して、大声で叫びたい気分だ。
吹き付ける強風に目を細めながら、
遥か水平線を見つめた。
夏色のアラビア、
イエメンの果てと、終わらない夏を見つけた。
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