ヨハネス・アゲイン


誰も居ないドミトリー、午前6時、

目覚ましのベルが鳴った。

背の低い2段ベッドから這い出し、

カーテンを開ける。




白黒だった景色に色が付くように、

まばゆい朝日が部屋を染めた。

スワジランドで初めて目にする太陽だった。


今日は南アフリカに戻る日。

「せっかく晴れたし、もう1泊しようか」という考えが

一瞬頭をよぎったが、まぁ、

これといって行きたい場所もないし、

すぐにその考えを打ち消した。


行こう、南アフリカへ、首都プレトリアへ!



重たいザックを担いでタクシーランクまで約2km、

動き出した街を通り抜ける。

タクシーを使いたいところだが、ここは我慢。

たかだか30分だもん、トレーニングだと思って歩くべし。

物価が高い国ではストイックにいかなければ。


タクシーランクで「プレトリア」行きの

コンビ(乗合ワゴン)を探したが、

すべてヨハネスブルグ行きだという…。


はぁ、ヨハネスか...

世界一危険な都市と言われているだけに、

できれば避けて通りたい街だが、仕方ない。

勇気を振り絞って行きますか。



ダミーの財布を用意し、小額のお金を入れる。

こいつは強盗に遭ったら投げ出す“おとり”。

マネーベルトもダミーを用意した。

ちなみに中にはトラベラーズチェックと

エチオピアのお金が入っている。

1ブル札(約10円)が30枚。

パッと見中身が多そうなので、これなら強盗も納得するだろう。


用心に用心を重ね、最悪の事態に備えた。

コンビに乗り込み出発を待つ。

最後の2人がなかなか集まらず、

結局1時間待ってようやく走り出した。

ムババネ→ヨハネスブルグは、

170リランジェニ(約1700円)で、

所要時間はおよそ5時間。



距離はあるものの、南アフリカは法定速度が120kmなので

ワゴンは滑るように進んでいく。

腰が痛くなった頃、ヨハネスブルグの街に入った。



想像していたよりはキレイな街だが、

通りは黒人たちで埋めつくされている。

思い込みが激しい性質のせいか、ピリピリした雰囲気を感じる。



「ヨハネスブルグを歩くなら強盗に遭う覚悟の上で」

某ガイドブックの一文が脳裏をよぎる…。

(ヨハネス、、、ブルブル)



到着はタクシーランクだった。

危険度MAXのエリアじゃん…。

ひぇ~!っと思いながらコンビを降り、

荷物の運び屋にチップを渡してボディガードを依頼した。

この街は安全をお金で買うに限る。


運良くプレトリア行きの大型バスを見つけ、

60ランド(約600円)でチケットを購入した。

トランスラックス社の豪華なバスは、

シートもよく倒れ快適だった。



ホッとしたのか、そのまますぐに眠りに堕ちた。

プレトリアの街は、まるでヨーロッパ。

オレンジのとんがり屋根に、道を覆う街路樹。

いくつも公園があって、人々が思い思いに過ごしていた。



「明日は街を散策しよう」

タクシーの車窓から街並みを眺め、期待に胸を膨らませた。

(結局、タクシー使ってんじゃん…)

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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