重たい荷物を抱え、宿を探す。
ひよっ子バックパッカーのデビュー戦だ。
日本から持ってきたガイドブックのコピーを頼りに
道行く人に「エクスキューズミー…」を、繰り返した。
徐々に気温は上がり、30度を超えただろうか。
シンガポールの美しい街並みに、額の汗もきらめいていた。
2時間かかってようやくお目当ての宿を探しあて、
狭いドミトリーの小さなベッドを確保した。17Sドル(1200円)だった。
国籍もわからない2人と同じ部屋。
「ハロー」と笑顔で挨拶すれば、それだけで通じ合えているようだ。
ここでは男女同じ部屋。性別や国籍は関係ない。
ただ、「旅をしている」という合言葉で信頼関係が成り立っている。
窓のない部屋は、空のように青い壁が印象的だ。
この小さな空間がやっと手に入れた安息地である。
街の雑踏が遠くに聞こえる。壁の冷たさが心地いい。
いつもなら早く繰り出したい衝動にかられるのに、
今はじっと、このやすらぎを感じていたい。
特別だった旅が、こうして日常になった。
毎日がワクワクの連続だろうと思っていたがそれは違うようだ。
楽しい。もちろんその気持ちは大きい。でも、
「生きる」という自分の命との距離が縮まった気がする。
刺激をただ求めるのではなく、見知らぬ地で、
生きる場所を切り開かなければならない毎日。
ただ先を急ぐことが重要ではない。足元を固めて、
一歩ずつ進むことがコツのようだ。
あれ?これって人生と一緒かも笑
旅って人生の縮図なんだ。
どこまで行けるか?
さあ、心にネジを巻いて、はじめの1歩を踏み出そう!
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