ホームラノーン(アローン)


目が覚めると11時だった。

マレーシアで携帯電話を失ってから目覚まし時計がない。

どこかで購入しなければ。


ここはタイのラノーン。ミャンマーとの国境の街だ。

チェックアウト12時。急いでシャワーを浴び、荷物をまとめた。


チェックアウトを済ますと、20時のバスまですることがない。

裏道にぽつんと佇む食堂を見つけ、

地元の中学生(?)に混じって同じものを食べた。

25バーツ(約80円)と懐に優しい。


食後は木陰で昼寝だ。

涼しい風が抜けて気持ちいい。

誰かの気配に眼を開けると、一人のお坊さんがいた。

彼もまたこの場所がお気に入りのようだ。

ふたりで静かな午後をたゆたう。


16時。再び宿に戻り、ロビーでノートにペンを走らせた。

日本語が珍しいのか、宿のスタッフは興味津々だ。

替わりばんこにやってくる。


「KAZ、この先どこへ行くの?」(ジャイ)

「ラオス、チベット、ネパール…、ゴールは南アフリカかな?」(KAZ)

「それは遠い!どうしてラノーンに来たんだい?」(ジャイ)

「ミャンマーに行ってみたくて。

ホントはヤンゴンやバガンにも行きたかったけど、遠くてね」(KAZ)

「ミャンマーが好きなの?」(ジャイ)

「お寺が好きだから、パゴダが見たいんだ」(KAZ)

そんなやりとりが続いた。

ひとりぼっちのラノーンは、時計の針も気にならない。


「KAZ、お寺を見に行こうか?」(ジャイ)

「えっ?」(KAZ)

「大きな蛇の階段がある…」(ジャイ)

「ナーガのこと?」(KAZ)

「YES!ナーガ!!」ジャイは飛び上がって喜んだ。


そして早く早くと急かす。

バイクの後ろにまたがり、ラノーンの街を走る。

ゆっくりと進んでいた時計の針が急に加速するように、

“今”が動き始めた。


いつも何かが動いている。

同じ毎日なんてありはしない。

それは気づかないだけで、絶えず変化を繰り返しながら、

僕らを未来へと誘う。

ラノーンの風を全身に受けながら、

時間とこのバイクじゃ、どっちの方が早いんだろう?

と、そんなことを考えていた。

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

0コメント

  • 1000 / 1000