毎日が夏。
この旅は、ずっと夏がつづく旅。
タイのパーイからメーホーンソーンへと移動した。
タイ北部の西端、ミャンマーとの国境にあるこの町は、
乾期には霧が立ちこめて幻想的な風景になるそうだ。
早起きしてみたが、街はクリアー。
残念ながらその光景には出会えなかった。
チャン族やカレン族、モン族など山岳民族が共に生活し、
隣国ミャンマーの文化の影響を受けているようだ。
また、ミャンマー様式の仏教寺院を見ることができ、
ワット・プラタート・ドイ・コンムーは、
何層にも重なり合った高い屋根をもつ木造の本堂、
精緻に施された美しい装飾などが見どころである。
車窓を流れる景色は、ずっと深山。
とにかく緑でいっぱいだ。
ときどき小さな川を渡ったり、山あいの村が顔を覗かせたり。
そんな景色を眺めていると、少年時代の夏休みを思い出す。
遠い親戚のもとへ行ったこと、
日が暮れるまで大地を駆け回ったこと。
泥んこになっても笑ってたこと。
ずっと終わらないそう思っていた、夏の日。
ロングバケーションにもいつかは終わりがくる。
あの頃の記憶は、もう断片的にしか思い出せないけど、
こんな心象風景に出会うと、微かに胸がうずく。
今、「明日」が来るのが楽しみでしかたない。
日本で仕事に追われていたころ、
何もすることがなく、ただぼんやりと過ごしていたころ、
こんな気持ちになかなか出会えなかった。
いつしか社会人になり、「夏休み」を取り上げられた僕らは、
懐かしい記憶だけがそっと心を慰めてくれる。
―この旅もいつかは終わる―
夢から覚めるように、もうひとつの現実へと戻るときがくる。
だから今だけは、終わらない夏を追いかけていたい。
あの頃の少年の眼差しで。
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