深夜特急@中国


中国は雲南省・景洪。

ここからペー族自治州の州都「大理」を目指す。

宿代を浮かせるため、またしても深夜バス作戦の決行だ。


中国には「寝台バス」なるものがある。

文字通り、ベッド付のバスである。

さっそく乗り込んでみると、横三列で二段ベッドが並んでいた。

横幅は狭いものの、足も伸ばせてこれは楽!

布団も枕も付いている優れもの。

あまりの快適さに走り出して10分で眠りについた。


しかし事件は2度起きた。

深夜12時。何やら叫びながら光が近づいてくる。

「えっ?」軍服を着て、手には銃!?。

乗客ひとりひとりの身元チェックが始まった。

これが噂に聞く中国の公安か…。

奪うようにパスポートをしゃくりあげ、

顔を思い切り懐中電灯で照らす。

そして睨みを利かせながらパスポートを投げ返した。


ふと窓の外に視線を送ると、

後ろ手に縛られて連行される姿があった。

背中に銃らしきものを突きつけ、男を蹴りながら…。

眠気も吹き飛ぶ、一瞬のできごとだった。


再びに眠りにつくも、

今度はあまりの静けさと寒さに目が覚めた。


「どこ?」


真っ暗な山の中、乗客の半分は姿を消していた。

寒さに震えながらバスを降りると、細い砂利道。

その先には大きな土砂崩れのあと…。

そして闇の中で唸り声が聞こえた。


なんだろう?


近づいてみる。すると、

1台の車が土砂に埋まっているではないか?

土砂を掻き分け、車を持ち上げる人たち。

懸命の救出作業は1時間ほどつづいた。

ラオスの道路事情も悪かったが、中国の田舎もひどいものだ。

こんな細い山道を大型バスが通るなんて…。


オリンピックに沸き立つ北京をはじめ、

上海や香港といった煌びやかな都会の影に、

時間が止まったままの小さな村がいくつもある。

広大な国だけに、中国の地域格差はすさまじい。

広がりつつある日本の地域格差、

この深い闇の向こうに、日本の将来を見た気がした。

旅のチカラ、旅のカケラ

世界一周の旅、 それはもう遠い夏のようだ。 500日間世界を駆け巡り、 300を超える長距離バスに揺られた。 旅を終えて日常に復帰したが、 それでも時間を見つけては小さな旅を続けている。 旅のチカラに引き寄せられ、 旅のカケラを集めていく、 そんな毎日。

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